フリークエンシーとは?意味・計算方法・最適な設定の考え方を解説

フリークエンシーとは、一定期間内における広告への接触回数を意味します。

テレビCMのみならず、Web広告でも頻出の単語ですので、多くの方がその意味を理解されていると思います。一方で、フリークエンシーの算出方法はよくわかっていないよ、という方も多いのではないでしょうか? 実は、フリークエンシーの算出方法はいくつか存在しています。

Web広告であれば、個々人の広告への接触回数を高い精度で補足することが可能ですから、算出方法はいくつもあるわけではないのですが、テレビCMのように、個々人の広告への接触回数を補足できないものについては「推計」をするしかありません。 本記事では、フリークエンシーの意味を改めて説明し、その重要性と、算出方法の一部を紹介します。

フリークエンシーとは

テレビCMにおけるフリークエンシーとは、一定期間内におけるテレビCMへの平均接触回数を意味します。テレビCMがどの程度視聴されたかという指標のひとつにGRPがありますが、GRPは(特定地域における)延べ世帯視聴率のため、調査地域の何%の世帯で視聴されたかを意味していません。

延べ世帯視聴率は「一度でもそのCMを見た世帯の割合 × 各世帯における平均視聴回数」を意味しています。この掛け算における「各視聴世帯における平均視聴回数」がフリークエンシーですね。 Web広告とは異なり、テレビCMの視聴率自体が視聴世帯割合を「推計したもの」です。

全ての世帯の全てのテレビが調査対象ではありませんので、一部の世帯における一部(あるいは全て)のテレビを調査対象にし、そこから全体の世帯における視聴率を推計しているわけです。当然、テレビCMにおけるフリークエンシーも「推計したもの」になります。

リーチとは

ちなみに、上記の掛け算における「一度でもそのCMを見た世帯の割合」のことをリーチと言います。

より正確には、リーチとは「広告到達率」あるいは単に「到達率」と呼ばれ、特定のテレビCMを見た世帯(あるいは人)の割合を意味します。

フリークエンシーの重要性

フリークエンシーを知ることはふたつの意味で非常に重要です。 まず、フリークエンシーを知ることができれば、想定しているターゲットがどの程度CMを視聴したかを明らかにできます。

10%の世帯で10回見られた場合も、、20%の世帯で5回みられた場合も、GRPは100%です。

ただ、前者は調査世帯の10%にCMが届いており、後者は調査世帯の20%にCMが届いています。CMを打っても視聴されなければ意味がありませんので、そもそも何世帯で見られたの?何人くらいに見られたの?ということがわからなければ、効果を検証することも、次回の反省に活かすこともできません。

次に、フリークエンシーを知ることができれば、「最適フリークエンシー」に対する示唆を得られる可能性があります。最適フリークエンシーとは、CMの効果が最大になる接触回数(視聴回数)を意味しています。古くからの言い伝えでは3回だとされていたり、3~5回だと言われていたり、何回接触すればいいかは諸説あります。何回の接触が最適かは、テレビCMのクリエイティブや、商品・サービスの性質やターゲット等にも依存してきます。

最適フリークエンシーを明らかにするには、実際にテレビCMを打ってみて、フリークエンシーを推計しつつ、検証していくしか道はありません。 余談ですが、テレビCMを一度見ただけで、その商品・サービスを認知して購入に至るなんてことはあまりありません。

テレビから流れてくるCMを何度も見たり聞いたりする中で、はじめてその商品・サービスを認知されます。つまり、テレビCMの効果が出始めるには、ターゲットに何度か見てもらう必要があると言われているのですが、効果が出始める回数を「最低有効フリークエンシー」、効果が落ち始める(視聴者に嫌われはじめる)回数を「最高有効フリークエンシー」、その間の回数を有効フリークエンシー」といいます。

フリークエンシーの算出方法

前述の通り、あくまで推計することしかできませんが、フリークエンシーの算出方法はいくつもあります。その一部を紹介します。

BBD(ベータ2項分布)モデル

業界標準の推計方法だそうです。広告マネジメント(2004)という書籍に詳細の解説がありますが、マニアックなので詳細は割愛します。興味がある人は、購入して読んでみてください。 簡単に言うと、

  1. 個々人が特定のテレビCMを見る確率は様々だが、個々人の総体(つまり皆)がそのテレビCMを見る確率は○○%と言えるよね。
  2. 皆が、○○%の確率で、そのテレビCMを見るとしたら、その「皆」を個々人だと考えてもいいよね。
  3. ある個人が○○%の確率でそのテレビCMを見るとしたら、そのテレビCMを●●回放送したときに、何回見られるかも計算できるよね。

という話です。正しく理解するには、高校レベルの数学と初歩的な統計学の知識が必須ですが、なるべく簡単に書くと上記のような感じかなと思います。わかりにくいでしょうか・・・

リーチから、間接的にフリークエンシーを割り出す

これはもっと簡単な話です。GRPが「リーチ × フリークエンシー」だと説明しましたが、フリークエンシーを知りたければ、GRPとリーチを知れば良い、という考えに基づいて、先にリーチを計算してしまおうという試みです。 ピープルメータ(PM)システムという調査方法では、調査世帯の個々人が特定のテレビCMを視聴したかどうかはわかります。広告主側にその詳細データまでは出てきませんが、調査会社は調査世帯におけるリーチを計算し、それをもとに調査地域におけるリーチを推計しています。GRPと推計されたリーチのデータを取得すれば、あとは GRP ÷ リーチ = フリークエンシー ですから、簡単に算出できますね。

まとめ

本記事ではテレビCMにおけるフリークエンシーの意味や重要性、算出方法について触れてきました。フリークエンシーは概念自体は簡単ですが、その推計方法は割りとマニアックですし、最適フリークエンシーまで考え出すと相当深い知識が必要になります。テレビCMで成果をあげるためには、推計部分に深い知識が必要だとは思いませんし、ツールで代替できる部分も多分にあります。基本的な概念はしっかり抑えて、あとは専門家に任せるのがよいでしょう。

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把握の難しいテレビCMの効果を可視化し、売上拡大を実現
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広告の効果測定における3つの大きな変化

この20年間で、マーケティング環境の変化が大きく加速しています。

20年前に誕生したインターネット広告(デジタル広告)は急速に普及拡大し、2019年にはテレビ広告を上回る程に伸長しました。※1 また、広告の配信媒体も、いわゆる4マスと呼ばれる媒体が中心だった20年前から、PCやスマートフォンなど様々な媒体が活用されるようになりました。

このような変化の中で、マーケティング責任者や経営者はどのようにして事業成長のためにマーケティングを最適化すればよいのでしょうか?

ここでは、マーケティングの効果測定における主な変化を紹介し、将来の変化に備えて企業やブランドがどのように対応すべきかを考えていきます。

※1 電通「2020年 日本の広告費」

変化その1:事業成果に貢献している施策を把握するのがより複雑に

2000年以降、マーケティングの環境における大きな変化のひとつが、デジタル広告の成長とアドテックの爆発的な普及です。

アドテックの登場により、広告の透明性が向上するとの期待がありましたが、実際には透明性の低下につながりました。複数実施している広告のなかで、どの広告が事業成果にどの程度影響しているかを把握することは、マーケターにとってより複雑になってきました。これは、アドテックの普及により、広告出稿メディア(検索エンジン、ディスプレイネットワーク、SNS、動画配信やeコマースプラットフォームなど)の多様化と、細分化が進んでいるためです。

広告媒体の増加とアドテックの普及に伴い、マーケティング活動で消費者へのリーチ量が拡大したのは確かですが、一方で各広告が生み出す効果を正確に測定することは、かつてないほど困難になっています。

変化その2:目先の成果に囚われすぎる傾向に

前の数字を追うことが重要視されやすいため、短期的な指標や結果をもとに意思決定を行う傾向が強まっています。しかし、この傾向は経営にとっては必ずしも正しい状態ではありません。

広告には短期的な事業成果につながる効果だけでなく、中長期的な事業成果につながる効果が存在します。マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)サービスMAGELLAN(マゼラン)の分析によると、平均で事業成果の70%以上を生み出しているのは、広告の短期的かつ直接的な影響ではなく、数年にわたり蓄積されたブランド力やその他の外的要因であるということが明らかとなりました。※2

つまり広告の短期的な効果というのは、約30%程度しか事業成果に影響を与えていないということです。※3

短期的なROI評価に基づいて意思決定をすることは簡単で、その瞬間は成果が上がっているように見えますが、実はこの方法は事業成長において必ずしも正しいとは限りません。

※2 ADVA MAGELLAN導入企業の分析結果平均より算出(2021年8月時点)
※3 この数値は全業界の平均の値であり、数値は業界・業種により大きく異なります。

変化その3:日々大量の広告に囲まれた消費者から、自社の注目を集めるのが困難に

インターネットやスマートフォンのようなテクノロジーの普及により、テレビ、ラジオ、新聞や交通などオフライン広告に加え、リスティング、バナー、SNSや動画配信プラットフォームなどデジタル広告でも、消費者は日々多くの広告に接触しています。

一方、消費者においては、多くの情報の中から自身で判断し、情報を取捨選択できる力が身についてきました。

このような情報過多な状況下で、広告主は消費者から選ばれるために、信頼してもらえるようなメッセージの発信や、感情を動かすクリエイティブの作成に焦点を当てることがより必要になっています。

クリエイティブを中心としたコミュニケーションの最適化も、様々なソリューションがあります。サイカでは、テレビCMとWeb動画において、消費者の感情の動きを脳波解析とデータサイエンスを活用した独自の分析技術で、狙った成果を生み出すクリエイティブを制作できるサービスADVA CREATOR(アドバ クリエイター)を提供しています。

マーケティング環境の変化をチャンスととらえる

環境の変化は革新の機会となります。適切なマーケティング効果測定の仕組みを築けば、変化する環境下においても、持続的に事業成果を最大化させることができます。

一方で、このような変化に対応したマーケティング体制を構築できている企業は、現状多くはありません。つまり、いち早くこの体制を構築することは、今後、競合から一歩抜きん出た成果を生み出すことができる、大きなチャンスとなると言えます。

マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)分析サービスであるMAGELLAN(マゼラン)が、貴社の事業をどのように支援できるか、詳しくはこちらをご覧ください

脳波と科学で動画クリエイティブの成果を飛躍させるADVA CREATORについて詳しく知りたい方、こちらからをご覧ください

【ゼロから始めるデータ分析#1】データ分析初心者がまず知るべき「分析の8ステップ」

ビジネスにおいてデータ分析の重要性が増していることは周知の事実です。データドリブンな経営を志向し、すでに動き出している企業や組織も多いのではないでしょうか。

しかし、

  •  データ分析とは何なのか、実はよく分からない
  •  貯まっているデータはあるが、目の前の課題との繋げ方が分からず活用できない
  •  データ活用を意識しているつもりだが、思ったような成果が出せていない
  •  自分は文系で、統計学や数学、プログラミングに詳しくないからデータ分析はできない

と動き出せずにいるビジネスパーソンがいることも想像に難くありません。

ですが実際のところ、ビジネスでのデータ活用は、専門知識がなくてもできることが多いのです。

この連載では、データ分析を学んだことがない方に向けて、ビジネスにおけるデータ分析の必要性と覚えておくべきデータ分析の基本をポイントを絞って解説し、データをビジネスの成果に繋げるヒントを紹介していきます。

第1回となる今回は、データ分析の基本となる「データ分析基本の8ステップ」を解説します。

↓ 「ゼロから始めるデータ分析」記事一覧はこちら

#1 初学者がまず知るべき「分析の8ステップ」
#2 データ分析初心者が覚えておくべき3つの分析手法
#3 データ分析初心者が知っておきたい、経営層を巻き込むコミュニケーションのポイント
#4 データ分析初心者が知っておきたい、経営層がデータ分析と分析担当者に求めるもの
#5 データ分析初心者でも経営と組織を巻き込める、現場担当者のための4つのTips

ビジネスにデータ分析が必要な理由

自動車を運転するときのことを考えてみてください。運転中、運転席前のメーターパネルに表示される速度計やガソリン残量、カーナビなどを確認しながら運転する方がほとんどではないでしょうか。

メーターがなくても車は走るし、目的地に到達することもできます。ですが、「メーターがない車を買いますか?」と聞かれたら、99.9パーセントの人はきっと買わないと答えるでしょう。

それはメーターが、「この速度でこのカーブを曲がり切れるか」「目的地までオイル補給なしで到達できるか」といったことを教えてくれるからです。また、カーナビが現在地や周辺情報を教えてくれるからこそ、いつも走ったことのない道を走る楽しみを味わうこともできるし、知らなかった抜け道を発見することもできます。

車のメーターは、目的地まで効率よく安全に行ける確度を高め、新しい道を教えてくれる、自動車にとって非常に重要な装置なのです。

データ分析を自動車のメーターに当てはめて考えると、なぜビジネスにデータが必要なのかがよく分かります。データを使わないビジネスは、メーターやカーナビのない自動車を運転しているようなものなのです。

自動車の速度計やガソリン残量のメーター

ビジネスにデータ分析を取り入れることで得られるメリットは、大きく2つあります。

一つは、「勝率を高めること」
車のメーターが安全な速度や必要なオイル量を教えてくれるように、データを使うと勝率の高い戦略を導き出すことができます。成果に対して、どの要素がどのくらい影響を与えているのかを方程式化できるからです。成果と要素の関係性を可視化・数値化すると、成功に再現性がもたらされます。

データ分析を取り入れることで得られるもう一つの効果は、「これまで見落としていた欠点を浮き彫りにしたり、思いもよらなかった伸び代を顕在化させたりすること」です。意外にも、データはクリエイティブの源泉なのです。

データは、貯めれば貯めるほど強化されます。より学習できるようになり、精度が上がるからです。データの蓄積を始めるのが早ければ早いほど、ビジネスの勝率を高めることができます。

デジタル化がますます進む時代、これまで以上に“データに基づいた判断”が必要になってくるでしょう。

「データを活用する」とは

具体的なデータ活用のフローを解説する前に、「データ」「データ分析」「データ活用」がそれぞれ何を意味しているかについても整理しておきたいと思います。

① データとは

「データ」をあえて定義づけるなら、“世の中の事象を定量化したもの”といえるでしょう。つまり、どんなものでも定量化できればデータになるのです。

データとは何かと聞かれたとき、「2021年8月1日はのり弁当が20個売れた」という購買データや、「2021年7月の平均気温は25.9度であった」という気象データなどを想像する人が多いのではないでしょうか。

データは大きく「量的データ(量的変数)」「質的データ(質的変数)」に分類できます。

量的データは、上に挙げたような個数や気温、件数、頻度、身長・体重など、単位のつく数値で表せるもの。一方の質的データは、性別や血液型、好きな芸能人や好き嫌いなど、カテゴリーを区別するものをいい、数値ではなく「あり・なし」や「A・B・O・A B」などの文字で表されます。

量的データと質的データ
データには「量的データ」と「質的データ」がある

技術の進歩により、質的データでも定量化する工夫ができるようになってきました。これからは、データ分析で扱えるデータの種類がますます増えていくことが予想されます。

② データ分析とは

“データから情報を取り出すこと”をデータ分析といい、データ分析には「記述統計」と「推測統計」という2種類の手法があります。

記述統計は、集めたデータを図表やグラフにし、”データを見やすくして特徴を探る”分析の手法です。

たとえば、学年ごとの平均身長と平均体重を記録した数値データ。これらを棒グラフや折れ線グラフにすると、学年ごとの平均身長の差異や、身長と体重の関係性が見えやすくなります。このように、データを見やすく加工して、収集したデータの性質を把握する取り組みが記述統計です。

一方の推測統計は、一部のサンプル(統計学では「標本」という)から全体の傾向を捉え、”データを見てもわからない情報を取り出す”分析の手法です。

たとえば選挙速報。「開票率1%で当選確実」というニュースを見て、なぜ分かるのだろうと不思議に思ったことはないでしょうか。

統計分析はよく味噌汁に例えられます。鍋いっぱいに入っている味噌汁のうち、お玉ですくったひとすくいも同じ味噌汁です。選挙速報では、開票した表の一部をサンプルとして全体の傾向を探り、当選・落選を判断しています。このようにサンプルを取って全体を把握しようという取り組みが推測統計です。

全国で投票された選挙票をすべて開票するのが難しいように、すべてのデータを集めるのが困難なケースも多くあると思います。そのようなときにはこの推測統計を使います。

記述統計と推測統計の違い

③ データ活用とは

データ分析によって、「身長と体重の増加は比例している」といった情報や、「男子は小学6年生から中学1年生の間の身長の伸びがもっとも大きい」など、何らかの情報が抽出されます。

 “抽出された情報を目的に合わせて解釈し、適用する”のが「データ活用」です。

たとえば、「20:00以降にごはんを食べると太る」という分析結果(情報)があったとします。

この情報を、「スポーツのために体重を●●kg増やしたい」という目的を達成するために活用するのであれば、「夜ごはんの量をこれまでより●●パーセント増やそう」となります。けれどももし、「体重を適正体重まで落としてダイエットに成功したい」が目的であれば、「夜ごはんは●●時までに食べ終わっていたほうがよい」となるでしょう。

このように、目的が変われば分析結果の解釈とアクションは大きく変わります。ビジネスでデータを活用する際も、目的の設定は非常に重要です。

データ分析の8ステップ

ここからは、ビジネスにおけるデータ活用のフローを、8つのステップに分けて紹介していきます。

ビジネスでデータを活用するときにもっとも重要なのが、以下のフローに沿って進めることです。頭から順に進めていき、「おかしい」と思ったら前に戻る。このフローに従わずに進めると、そのデータ分析は失敗に終わる可能性が高くなってしまいます。

データ分析の8ステップ
データ分析は、基本の8ステップに沿って進めることが重要

【Step1】 目的(達成したいことを明確にする)

先述のとおり、目的によって解釈やアクションは大きく変わります。なので、まずは“なぜデータ分析をするのか”という目的を明確にすることが重要。

「売上を最大化したい」「新規事業を成功させたい」など、会社としての大きな目標を自分ごと化し、データを活用して達成したい目的にまで落とし込む作業が、データ分析の最初のステップです。

Point)当たり前。でも重要な“目的意識”

一見当たり前に思われるかもしれませんが、目的があいまいなまま分析をした結果、多大な労力と費用をかけて分析をしたのに有益な示唆が得られずに終わるケースが多くあります。組織で分析・意思決定・巻き込み・実践への落とし込みを実現するためには、強い目的意識を持つことが重要です。

【Step2】 課題(解決したい課題を特定する)

データ分析の目的が明確になったら、目的を達成するために解決すべき課題を特定します。課題を特定するためのアプローチは2つあります。

1. 何が課題か想定できる場合:実データから特定する

例として、目的が「売上を最大化したい」の場合で考えてみましょう。

① 売上を構成する要素を分解する

売上は「新規売上」と「既存売上」に分解できます。さらにそれぞれの要素を分解していくと、売上を構成する要素の洗い出しができます。

売上を要素分解した図
② 要素をシンプルなグラフにし、成果やコストを比較

要素の洗い出しができたら、上段から成果やコストを比較していきます。この時、シンプルなグラフにすると比較しやすいです。

売上を構成する「新規売上」と「既存売上」を比較すると、「既存売上」は安定している一方、「新規売上」が下がっていることがわかります。

既存売上と新規売上を比較した折れ線グラフ

「新規売上」が下がっていることがわかったので、次に「新規売上」を構成する「CVR」と「流入」を比較します。「CVR」は安定している一方、「流入」が低下していることがわかります。

コンバージョン数と流入数を比較した折れ線グラフ
③ 課題を特定

同じように、低下している「流入」を構成する「ディスプレイ広告(からの流入)」と「リスティング広告(からの流入)」をグラフで比較してみると、リスティング広告からの流入数が低下していることがわかります。

ここで、リスティング広告の流入数低下が課題であると特定できます。

ディスプレイ広告とリスティング広告の効果を比較した折れ線グラフ

2. 過去のデータがなく、何が課題か想定できない場合(新規事業を創出する場合など):未来の仮説(こうなるのではないか)をつくり、想定される未来の課題を洗い出す

① 未来の仮説を立てる

② 仮説に近い過去のデータを参考に、因果関係を推測する

③ 課題を特定する

未来の仮説(達成したいビジョン)から課題を特定する手順を説明した図

Point)課題は、2つのアプローチのいずれかを使って特定する

これらのアプローチを使わずに課題を特定しようとすると、妄想で課題を設定することになります。そうすると、課題を達成しても目的が達成されないという落とし穴にハマってしまうので注意が必要です。

【Step3】 仮説(課題を引き起こす要因を推測する)

課題が明確になったら、Step3で、その課題を引き起こしている要因を推測します。「Step2:課題の特定」と同じように、ここでも要素の洗い出しと構造化からスタートします。

例として、「リスティング広告の流入数が少ない」という課題の要因を推測してみましょう。

① 「リスティング広告の流入数」を構成する要素を洗い出し、洗い出した要素を構造化する

課題と特定した「リスティング広告の流入数」を構成する要素を洗い出し、課題→KPI→要因の順番で構造化していきます。

「リスティング広告の流入数」を構成する要素を洗い出した図

Point)構造化したら、「因果関係は正しいか」「MECEになっているか」の2点を確認する

構造化する中で、因果関係の間違いや要素の抜け漏れ・重複があると、精度の高い仮説が立てられません。構造化したら、以下の4点を確認しましょう。

・ KPIと要因(施策)が同じステップで扱われていないか
・ 課題とKPI/KPIと要因が逆になっていないか
・ 課題を説明する要素に漏れがないか
・ 要素に重複はないか

② 課題を引き起こす要因を推測する

構造化した図を見ながら、どの要因が課題を引き起こしているのかを推測します。

Point)仮説を立てる際は、チームメンバーや組織外の人と意見交換をする

自身の経験が仮説の範囲を狭めてしまったり、仮説の矛盾に気づかないまま進めてしまったりするケースがよくあります。仮説を立てる際は、社内外の人の意見を聞き、仮説の精度を高めることが重要です。

③ 想定される分析結果を推測する

②で課題を引き起こす要因を推測したら、それらの要因がどのくらい影響を及ぼしているのかまで推測するようにしましょう。

Point)仮説をつくる時点で、想定される分析結果も想定しておく

仮説を立てたら、“その仮説を実証したらどのような分析結果が出るか”まで考えておきましょう。
たとえば、「売上低下には、値下げと天気が影響している」という仮説を立てたときは、「値下げは売上の○○パーセント、天気は○○パーセント程度に影響を与えている」といった分析結果まで想定するようにします。

【Step4】 データ(仮説を実証するために必要なデータを集める)

「Step4:データ」では、Step3で立てた仮説を実証するために必要なデータを集めます。

分析に必要なデータ

Point)データを集める際は、“仮説を実証するために必要なデータは何か”という視点で考える

持っているデータをそのまま使って仮説を実証しようとすると、場合によっては間違った分析をしてしまいます。以下の例を参考に、“仮説を実証するために必要な形”を考えましょう。

    

(例)持っているデータをそのまま使わず、“仮説を実証するために必要な形に変えて”使う例

「夏の暑い日ほど売上が落ちる」という仮説を実証したい場合:

■ データをそのまま使う場合

「8/1は30度、8/2は32度……」といった気温データをそのまま使って分析をする

→「季節を問わず、気温が1度上がると売上が●●円下がる/上がる」という、夏に限らない分析結果が得られ、仮説を実証できない。場合によっては、誤った分析の示唆を導き出してしまう。


■ データを必要な形に変えて使う場合

「気温30度以上の日は1、30度未満の日は0」といったフラグを立てて分析をする

→「30度以上の日に売上が●●円下がる/上がる」のような、気温と売上の関係性が分かる分析結果が得られ、仮説を実証できる。


【Step5】 分析(集めたデータを分析する)

集めたデータを、仮説を証明するために適切な分析手法で分析します。
(※詳細は、第2回の記事で解説します)

【Step6】 解釈(目的から分析までが一気通貫しているか振り返る)

解釈のステップは、このあとアクションを実行すべきかを判断する最後のとりで。目的から分析までが一気通貫しているか否かを振り返る作業=解釈、と考えると分かりやすいです。

データ分析の8ステップ「Step5:分析」は、目的から分析までが一気通貫しているか否かを振り返る作業

Point)振り返りは、Step3で立てた“仮説” と “想定した分析結果” を、実際の分析結果と見比べて行う
(一フェーズずつ戻って確認する必要はありません)

1. 仮説も分析結果も、当初想定していたものと違う場合

① 「Step1:目的」に戻り、“どういう目的で分析をしたのか” “特定した課題は何だったか”を確認する

② 最初に立てた仮説とは別の因果関係をもとに仮説を立て直す

③ 再度、「Step4:データ」「Step5:分析」「Step6:解釈」と進める

仮説も分析結果も、当初想定していたものと違う場合の対応

2. 仮説は合っているが、分析結果が当初の想定と違う場合

① 「Step4:データ」に戻り、データに間違いがないかを確認する

② 正しいデータを集める

③ 再度「Step5:分析」「Step6:解釈」と進める

仮説は合っているが、分析結果が当初の想定と違う場合の対応

【Step7】 巻き込み(データをもとに組織を動かす)

仮説が実証されたら、組織を巻き込んでアクションの実行に進みます。
(※詳細は、第3回第4回の記事で解説します)

データ分析の8ステップは「分析」「巻き込み」「実行」の3セクションから成り立つ

【Step8】 実行(決定したアクションを実行する)

関連資料の無料ダウンロード

成果に繋げるデータ分析の「基本の8ステップ」
~ビジネスの現場で使えるデータ分析の押さえるべき点とは?~

データ分析をゼロから学びたい人におすすめの書籍3選 

西内啓(2013)『統計学が最強の学問である』ダイヤモンド社

統計学は何のためにあるのか。何の役に立つのか。現代社会と我々の人生に、統計学が与えるインパクトの大きさを実感できる一冊です。

鳥居泰彦(1994)『はじめての統計学』日本経済新聞出版

数学が苦手な人でも理解できるよう、丁寧に解説された統計学の入門書。統計学とは何かを体系的に理解するためにまず読みたい一冊です。

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森岡 毅・今西 聖貴(2016)『確率思考の戦略論』KADOKAWA/角川書店

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)のV字回復の裏に存在した「数学マーケティング」について詳細に書かれています。データ活用の具体的な事例がイメージできる一冊です。

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おわりに

以上、データ分析の8ステップを紹介してきました。

この8ステップを順番にやらないと、目的不在のデータ分析になりやすく、データ分析をアクションの実行まで繋げられない可能性が高まります。

特に、「こんな分析がしたい→こんなデータがほしい→こんな仮説もあるのでは?」と、フローを逆走していくパターンは、いちばんよくないデータ分析だといえます。アクションに繋げられないデータ分析はビジネスで活用できず、分析のための分析で終わってしまいます。

この8ステップを見てもらうと分かるとおり、数学や統計分析の専門知識を必要とするのは「Step5:分析」だけ。データ分析で重要なのは、明確な目的意識と精度の高い仮説、経験が育てる想像力と創造性です。すでに業務に関わっている方なら、これらはきっと持ち合わせていると思います。

はじめてデータ分析をする方も、ぜひ一度、この8ステップを一気通貫で体感してみてください。

↓ 「ゼロから始めるデータ分析」記事一覧はこちら

#1 初学者がまず知るべき「分析の8ステップ」
#2 データ分析初心者が覚えておくべき3つの分析手法
#3 データ分析初心者が知っておきたい、経営層を巻き込むコミュニケーションのポイント
#4 データ分析初心者が知っておきたい、経営層がデータ分析と分析担当者に求めるもの
#5 データ分析初心者でも経営と組織を巻き込める、現場担当者のための4つのTips

↓ ビジネスメディア『PIVOT』にて、ビジネスにデータサイエンスを活かす方法を解説しています

株式会社サイカ
代表取締役CEO 平尾 喜昭 

父親の倒産体験から「世の中にあるどうしようもない悲しみをなくしたい」と強く思うようになる。慶應義塾大学総合政策学部在学中に統計分析と出会い、卒業直前の2012年2月、株式会社サイカを創業。創業前にはバンドマンであったというユニークなキャリアも持つ。 

MMMを活用したマーケティングによるの事業成果の予測分析

マーケティング担当者の使命は、マーケティングを通して事業成果を上げるための方法を考え、実行することです。

どのくらいの予算をかけるべきか、どの媒体が最も効果的か、効率的に販売促進を行う方法は何か、多くの企業で議論されているでしょう。

その効果・効率を計る方法として、「MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)」と呼ばれる分析手法があります。

MMMとは?

MMMは売上などの事業成果に対し、各マーケティング施策がどの程度影響したのかを可視化する方法です

例えば、健康診断を想像してみてください。

健康診断では、お酒や糖質・脂質など何を食べたり飲んだりしたか、どのくらいの頻度でどのような運動をしたか、運動した時の心拍数はいくらだったか、外部要因だと住まいはどのような環境かなど、複数の要素を考慮して結果を判定します。

MMMを活用すれば、健康診断の結果と日常生活や環境との関連性と同じように、事業成果とあらゆるマーケティング活動との関係性を分析できます。

MMMの分析手法についてもっと詳しく知りたい方は、ぜひ下記の記事をご覧ください。
マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)とは?

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全マーケターが知るべき「MMM」とは?
~3社の事例に見る活用効果~

MMMの用途

MMMでは、時系列データと回帰分析を用いて、マーケティング施策が売上などの事業成果にどれだけ影響を与えたかを推定しています。

分析結果を基に未来の予算をどこにいくら投資するか、それによりどのぐらいの成果を生み出せるかなど、データを根拠にした意思決定が可能になります。

MMMを使うメリット

以下のような状況を例に挙げてみましょう。

四半期を締め、売上報告書を確認したところ、売上目標が達成されていませんでした。経営層からは、なぜ目標に達しなかったのか?原因を追究されるでしょう。

MMMを使えば、目標達成できなかった原因を、経験を基に推測するのでなく、数値的根拠を基に説明できます。原因が分かれば、解決策や改善案を生み出すこともできます。

広告を含めたあらゆるマーケティング施策が、売上などの事業成果に、どのくらい影響しているかを可視化し、どのような関連性をもっているかを理解することができます。その相関関係を定期的に確認することで、企業は予算と投資の配分によって、どのような結果を生み出せたのかを正確に把握することができます。

投資判断時の不透明さの緩和が、MMMの大きなメリットの一つです。つまり、効果の悪いマーケティング施策にむやみに投資しないで済むということももちろんですが、数値的な根拠を社内に提示することで組織全体での理解や納得も得やすくなります。

多くのマーケティング担当者にとって、広告予算を確保することは重要な課題です。定量的に費用対効果を説明できている担当者は、より多くの予算を確保できる可能性が高くなります。

マーケティング施策が過去に上手くいったという分析だけではなく、将来の売上に対してどのくらい大きな影響をもたらせるかを証明することは、高額な予算承認のために必要です。

マーケティング担当者は未来を予測できるか?

占いの領域では未来を予測するために、占星術、タロットや手相などのさまざまな方法が使用されていますが、マーケティング担当者として活用できる唯一の方法は、データ分析です。

データが、フォーマットや粒度もさまざまで、分析の際に有効活用するためには、各種データの質、扱い方と解釈方法が最も重要な要素です。例えば、過去に出稿した広告のデータおよび、売上などの事業成果に関するデータ、外部要因に関するデータを基に、MMMを活用し分析することで、どの施策がどの程度事業成果に影響を与えているかという相関関係をモデル化できます。

企業の状況に応じた分析モデルを高い精度で構築することで、誤差の少ない成果予測ができます。また、松竹梅の広告予算や、各施策への配分変更によって、成果がどう変わるのかをシミュレーションすることもできます。

先程の健康診断の例でいうと、「運動を週1回から週3回に増やして、さらに運動する時の心拍数を120 bpmになるように変更し、糖質制限ダイエットを追加する」といったシナリオに変更することで、未来の健康診断結果にどう影響を与えるのかを予測できるようになります。

MMMツールやベンダーによって異なりますが、MMMでは、まず最初の分析モデル構築時に1~3年分の過去データで学習させます。次に、学習で出来上がったモデルを利用して予測を立て、実際の成果と比較して誤差率を測ります。そして、予実比較をもとに、必要に応じてモデルを調整し、精度を向上させます。同じプロセスを定期的に繰り返すことで、MMMの正確性を担保していきます。

※実際には、定期的なモデル調整方法も、MMMツールやベンダーによって異なります。
1度モデルを作って、お客様に提供して終わりというサービスもあれば、年に1回のモデル調整/更新や、四半期あるいは月に1回モデルの調整を行うサービスもあります。

原則としては、MMMの調整/更新の頻度が高ければ高いほど、市場のトレンドなどに柔軟に対応でき、高い正確性を発揮します。マーケティング担当者からみると、MMMから得た示唆をよりスピーディにアクションに落とし込めるメリットもあります。

まとめ

MMMは、実施しているさまざまなマーケティング施策における優先順位を設定したり、リソース(時間、予算、労力)を配分したりするための、企業の頼みの綱となるべきものです。

マーケティング担当者が投資の必要性を説明する際の根拠になるとともに、投資最適化や施策効果の最大化のためにはどのような調整をすべきかという示唆が得られます。

マーケティングによる成果予測ツール

マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)分析サービスMAGELLAN (マゼラン) では、あらゆる広告を分析し、費用対効果を適正に評価できます。その分析も基づいて広告予算の最適な配分をシミュレーションし、成果予測を自動的に算出できます。

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個人情報保護規制の今後の見通しと、企業が取るべきアクション

企業が広告を通じて本当に伝えたいメッセージは何かを起点に、その企業の存在意義を考え直すタイミングが来た。インターネットの普及以降、拡大を続けてきたデジタルマーケティングは、いま分岐点に立っている。クッキーに代表される、個人に紐づくデータ(以下、パーソナルデータという)の取得や利用に、技術上及び法規制上の制限が生じるためだ。この変化は、デジタルマーケティングを手がけるすべての企業に大きな判断を迫っている。

パーソナルデータに対する人権意識の高まり

ユーザーが自社のサイトでチェックしていた商品を、他社のサイトでも広告として掲示し購入を促す。また、ユーザーの検索履歴や位置情報を元に自社のサービスを提案する。デジタルマーケティングでは当たり前に使われているこれらの手法が、今までのようには使えなくなる日が迫っている。

アップルはすでに2020年3月に、同社のブラウザ『Safari』でサードパーティクッキーの利用を禁止しており、グーグルも2023年に同社のブラウザ『Chrome』でこれに追随する見込みになっているからだ。

そもそも、クッキーとは、自社のサイトを閲覧しているブラウザを特定する技術であり、このうち、サードパーティークッキーは、そのサイトの運営者以外の第三者が発行したクッキーを指す。

デジタルマーケティングを手がける企業は、ファーストパーティクッキーと呼ばれる自社で発行したクッキーと、複数のサードパーティクッキーを組み合わせることで、ユーザー一人ひとりをより深く理解しようとしてきた。しかし、その手法が使えなくなるのだ。

ファーストパーティークッキーとサードパーティークッキー

アップルやグーグルが、自社の自由度を下げるかのような変更を決断した背景には、特に欧州で、米国籍プラットフォーマーへの不信感が高まっていることがある。GAFAのような巨大プラットフォーマーは確かに生活を便利にしてくれたが、ユーザーは、プラットフォーマーがパーソナルデータを寡占的に取得、利用して収益を上げていることを快く思っていない。以前から欧州は人権意識の高い地域だったが、プラットフォーマーの台頭は「私のデータは私のもの」「デジタル化された個人情報は人権の一部」という考え方を広く深く定着させた。

企業に求められる「倫理的な姿勢」

こうしたユーザーの意識の変化に合わせて、各国の法規制も変化してきた。個人情報の取り扱いに関するルールは、年々厳格化の一途をたどっている。

顕著なのは欧州でのケースだ。2018年、EUでは一般データ保護規則(GDPR)が施行された。これは、1995年に施行されたEUデータ保護指令(クッキー指令)の特別法として制定され、パーソナルデータやプライバシーの保護をより厳格にするものだ。同様の動きはアメリカでも起きている。シリコンバレーのあるカリフォルニア州では、2020年にカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)が施行された。

GDPR、CCPA、個人情報保護法

日本でも、改正個人情報保護法が22年4月に施行される。施行後は、氏名や住所といった個人情報に加え、クッキーや検索履歴、位置情報など、それ単体では個人と紐づかない情報を個人と紐づけて利用する場合に規制の対象となる。

個人の権利保護が強化されるのはGDPRやCCPAと同様だが、日本では法改正の発端となる事件があった。2019年に、個人ユーザーと企業のマッチングを行う事業者が、ユーザーの許諾を得ることなく、自社で取得したクッキーや閲覧履歴などから独自に算出したスコアを企業側に提供していたのだ。提供した事業者側ではそのスコアから個人を特定できない仕様になっていたが、提供を受けた事業者側では、技術的に容易に個人を特定できる仕組みになっていた。このため、違法ではないものの、法の趣意から逸脱した不適切なサービスと見なされ、提供した事業者側は内閣府の個人情報保護委員会から勧告を受けた。

欧米ほど人権への意識が高いわけではないとされる日本でも、このようなデータの利用は、多くのユーザーに、自分のデータや履歴が思わぬ形で使われかねないという“気持ち悪さ”を抱かせた。個人情報保護法は、こうしたユーザーの心境に鑑みて、企業の行き過ぎを規制することを大きな目的として改正された。

どのような利用の仕方ならユーザーは許容し、どこからを許容しないかは明確ではない。物差しはあるが目盛りがなようなものだ。炎上は、企業が考えているよりも手前の段階で、そして思わぬ形で発生する。

企業の個人情報保護を確認するユーザー

ポストクッキーには、抜け道探しより「パーソナルデータを使わない」選択肢

法規制やプラットフォーマー、ユーザーの変化を受け、これまでビジネスにパーソナルデータを利用してきた企業は、その扱い方を考え直す必要がある。

まず、第三者から譲り受けたクッキーは、グーグル、アップルの動向により有用性が落ちると見られている。クッキーを使ったマーケティングを続けるのであれば、ルール上、取得と利用の許可をユーザーから得る必要がある

また、許諾を得るにあたっても注意が必要だ。ユーザーにわかりにくい方法で許諾を得た場合、法律違反でなくても、その姿勢が批難されることもあるからだ。さらに、欧米に追随する形で、今後日本でも、クッキーなど個人にまつわるデータ利用への規制が強まっていく可能性がある。

クッキーを使う代わりに、グーグルが新たに開発したFLoCを採用するという選択肢もある。この場合、ターゲティングの対象は、ユーザー個人ではなく、オンライン上でよく似た行動をとっているユーザー群となる。しかし、個人を特定しない技術なので、これまでのような精度ではターゲティングができなくなることが予想される。さらに、いずれはこのFLoCも、法規制やグーグルによる自主規制の対象となる可能性が高い。巨大プラットフォーマーがパーソナルデータを囲い込んでいるという構図は変わらず、「特定のユーザー群に所属することを示すデータも人権の一部だ」と解釈が拡大する可能性があるからだ。企業側は、パーソナルデータを利用し続ける限り、常に法規制やプラットフォーマー、ユーザーの変化に追随し続けるという構図から抜け出せない

このいたちごっこに終止符を打つには、パーソナルデータを使わないという決断を下すことだ。たとえば、マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)と呼ばれる統計学的分析を採用するという選択がある。MMMは、パーソナルデータも大量のサンプルデータも必要とせず、テレビCMや交通広告など、複数のメディアやチャネルを横断して分析できる手法だ。70年代から海外の企業が導入しており、実績も十分にある。このMMMにシフトすれば、プラットフォーマーやルールの変更に過敏になる必要がないし、対応し損ねた場合のペナルティや対応に苦心する必要もないし、そもそも、ユーザーからも不信感を抱かれる心配がない。プラットフォーマーの手のひらの上からも脱出をはかれる。多少難解でも、長い目で見れば堅実でかつクリーンなのだ。パーソナルデータ頼みのデジタルマーケティングからの離脱は、着手が早ければ早いほど、スムーズかつ低コストに進められる。

Cookie代替案のメリット・デメリット

クッキー問題は、マーケティングの課題ではなく経営課題

これまでのデジタルマーケティングは、パーソナルデータを入手し、それをよりどころとしてオンラインでユーザーを追いかけ回してきた。オフラインマーケティングでは難しかったワン・トゥ・ワン・マーケティングを可能にする場が、オンラインだったのだ。

目の前の一人のユーザーの動きが数値化され手に取るようにわかってしまうが故に、対処的なテクニックが磨かれてきた側面がある。実際にそれが功を奏し、購買に結びついたこともあるだろう。しかし、その成功は極めて局所的なものだ。そのユーザーはもしかするとそこまでしつこく追いかけ回さなくても購入していたかもしれないし、ほかのユーザーは追いかけ回されることに辟易し、追いかけまわす企業に対してネガティブなイメージを抱き、離れていったかもしれない。ワン・トゥ・ワンのデジタルマーケティングが、大局的に見たときにも最適なマーケティング手法なのかは、改めて評価し直す必要がある

そもそもマーケティングとは、何かを買ってもらうためのものではない。それに触れた人の心を動かし、新しいものの発見を促すものだ。その発見が、すぐに購買に結びつくこともあれば、結びつかないこともある。しかし、そうした揺らぎを包含し、人の心を動かそうとする試みを積み重ねることが本来のマーケティングではないだろうか。広告は、ただの押し売りではないはずだ。

個人情報保護規制強化の潮流の中、企業に求められるアクション

アップルやグーグルの方針転換や相次ぐ法改正は、一見すれば、デジタルマーケティングの自由度を著しく下げるものだ。しかし、見方を変えれば行き過ぎたターゲティングからの脱却を図り、企業が広告を通じて本当に伝えたいメッセージは何かを起点に、その企業の存在意義を考え直すきっかけにもなる。

したがって、この問題は、マーケティング部門の課題ではなく経営課題だ。真摯に向き合う企業だけがユーザーに“気持ち悪さ”を抱かせず、長く支持され、生き残っていける。裏を返せば、そうした視点を持てない企業は市場からの退場を余儀なくされるだろう。

[デザイン]田中暢
[企画・編集]川畑夕子(XICA)

データサイエンスは「経験と勘」を活かす手段

AmazonやWalmart、NETFLIXなど、成功した企業の多くがデータを積極的に活用しており、ビジネスの成果を上げる上でデータが重要であることは、誰もが認識するところだ。それでもなお、データというものに苦手意識があり、自分には縁遠いものだと感じている人は少なくないのではないだろうか。 

本記事では、データサイエンスによって達成できることと、その可能性の大きさをあらためて見つめるとともに、いま企業がデータサイエンスに取り組む意味・意義を、サイカCEO平尾喜昭に聞く。 

POINT

  • データサイエンスは「確実性」と「意外な発見」をもたらす
  • データサイエンスには8つのプロセスがある
  • データサイエンスの実践で重要なのは、目的、課題、仮説の設定と分析結果の解釈
  • 「仮説力」はデータサイエンスの実践に欠かせないスキル
  • 仮説力の基盤となるのは、一人ひとりが持っている「経験や勘」
サイカ代表取締役CEO 平尾喜昭氏
株式会社サイカ 代表取締役CEO
平尾 喜昭(ひらお・よしあき) 

父親の倒産体験から「世の中にあるどうしようもない悲しみをなくしたい」と強く思うようになる。慶應義塾大学総合政策学部在学中に統計分析と出会い、卒業直前の2012年2月、株式会社サイカを創業。創業前にはバンドマンであったというユニークなキャリアも持つ。 

「非連続な成長」を実現する、データサイエンスへの期待 

── 近年、「データサイエンス」への注目が急速に高まっていますが、その理由をどのようにとらえていますか。 

9年前、サイカを創業した2012年と比べると、データサイエンスを取り巻く状況は大きく様変わりしました。当時から、データサイエンスは「重要視」こそされていたものの、より一般的に注目されるようになったのはここ5年ほどのことです。 

さまざまな事象をデータ化して収集・蓄積することの重要性が「ビッグデータ」というキーワードとともに語られた、データサイエンスの黎明期。その時期を経て、収集したデータを加工・整理することへの関心が高まっていきました。この頃には、BI(ビジネス・インテリジェンス:ビッグデータを整理・可視化し、経営の意志決定を支援する)ツールを提供する企業が次々と上場を果たすなど、市場が大きく伸びていきました。 

そして近年、整理されたデータを分析して“次のアクション”に活かしたいというニーズが高まってきたことで、おのずとデータサイエンスが注目されるようになったのです。 

データは「集める」「溜める」「整理する」だけでは意味がなく、目標達成や課題解決のために「分析する」必要がある──いま振り返ってみると当たり前の帰着のように思えます。しかし、世の中に流通するデータが膨大かつ多様になり、データを管理・活用するためのツールが広く普及してきたことを背景に、「せっかく手元にあるデータを、有効に活用したい」と考える人・企業が少しずつ増えてきたのが、この10年ほどの間に起きた変化だったのだと思います。 

サイカ代表取締役CEO 平尾喜昭氏

これに加えて、いくつかの事象が、データ活用の気運の高まりに拍車をかけました。 

なかでも潮目を大きく変えたのが2013年に出版された『統計学が最強の学問である』(著:西内啓)です。普段データというものに馴染みがなかった人を含めて、統計学やデータサイエンスの存在が広く一般に知られ、意識されるようになりました。データサイエンティストをはじめとするデータを取り扱う人材が「かっこいい(+稼げる)」存在として認識され始めたのもこの時期だと思います。 

映画『マネーボール』(*1)が公開されたのも、GAFAが加速度的に成長していったのも、おおよそ同時期のこと。データを駆使して成功した人や企業のエピソードが“クール”にパッケージングされて発信されたことで、データサイエンスは人々の中で「注目すべきもの」へと急速に変わっていきました。 

ひとつポイントと言えるのは、どの事象も、データ活用によって「非連続な成長」を果たしたエピソードだということです。 

『マネーボール』のオークランド・アスレチックスは、データを駆使することで2000年から4年連続でプレイオフに出場し、その間に2度、シーズン100勝以上を記録する快挙を成し遂げました。最初は小さなスタートアップだったGAFAは、データを駆使することで非連続的に大手企業へとのし上がっていきました。 

これまで見えていなかったこと、気づいていなかったことがデータによって明らかになり、「データを駆使すれば、潤沢な資源がなくとも勝つことができるのではないか」という期待が、人々をさらにデータサイエンスに引き付けたのだと思います。 

これまでの延長線上では勝つこと・生き残ることが難しくなった時代、多くの人・企業が待望していた「武器」として、データサイエンスは受け入れられたのだと考えています。 

(*1)『マネーボール』 
メジャーリーグの貧乏球団を、独自の理論「マネーボール理論」によって常勝球団へと育て上げた、実在する球団ゼネラルマネージャー ビリー・ビーンの半生を描いた映画。マネーボール理論は、各統計から選手を客観的に評価する「セイバーメトリクス」を用いる。

サイカ代表取締役CEO 平尾喜昭氏

データサイエンスの2つの効果「確実性を高める」「意外な発見をもたらす」 

── データサイエンスで実現できることとは、ずばり何でしょうか。 

一言で言えば、「確実性を高める」ことです。政治にしろ、ビジネスにしろ、スポーツにしろ、「勝つべくして勝つ」「勝つ確率を上げる」ことができるようになるのが、データサイエンスの力です。 

ですから、データサイエンスは「勝つための法則性を導き出す作業」と言い換えることもできますね。 

データを使って「確実性を高める」方法には、大きく2つのパターンがあります。「仮説を実証すること」と「仮説を立てるためのヒントを得ること」です。 

企業の広告活動を例にとってみると、データを使うことで「売上を高めるためには、広告Aより広告Bを強化すべきなのではないか?」という仮説を検証することもできますし、仮説に反する場合は、これまで想定していなかった広告媒体やクリエイティブの可能性を探ることもできます。 

データサイエンスが活きる領域は、もちろん広告だけではありません。「勝つための法則性を導き出す」ことで達成できることの幅は広く、次のようなこともデータサイエンスで実現されてきたことの一例です。 

データサイエンスを活用して実現されてきたことの例
データサイエンスで実現されてきたことの例

事象をデータ化することさえできれば、データサイエンスを行うことができます。 

技術の進歩により、世の中のほとんどすべての事象は何らかの形でデータ化することができますし、どんなデータでも何らかの方法で分析することができます。データサイエンスに達成できない目的・解決できない課題はないといっても過言ではありません。 

あらゆる目標達成・課題解決に使えるからこそ、企業規模や業種業態を問わず、「データ活用によって成功した企業」の事例も枚挙にいとまがありません。 

NETFLIXは、1998年、わずか30名の社員とともにDVDソフトの郵送レンタル・販売事業を開始しました。同社はプログラミングに精通したデータサイエンティストを雇い、データ分析を駆使したレコメンド機能やパーソナライゼーション、オリジナル作品の企画制作を推進しました。これによって指数関数的な成長を遂げたNETFLIXは、2020年に売上高250億ドル(約2兆5915億円)を達成しています(*2)。 

Walmartは、データ分析力を武器に世界最大の小売チェーンへとのし上がりました。同社は定量的な販売・在庫データだけでなく、地域固有のニーズや気象によるニーズの変化など、定性的なデータの分析にも長けていました。また、得られたデータや分析結果をサプライヤーにも提供することで業界全体の成長を後押ししていることでも知られています(*3)。  

あえてこうした例を挙げるまでもないほど、データを駆使してビジネスの成果を上げることは、もはや息をするのと同じように、ごく当たり前のことになりつつあります。 

(*2)出典:『分析力を武器にする企業(トーマス・H・ダベンポート、ジェーン・G・ハリス著、日経BP、2008年) 』、『Harvard Business Review(https://hbr.org/2018/01/data-can-enhance-creative-projects-just-look-at-netflix)』、『Netflix, Inc.決算資料(https://s22.q4cdn.com/959853165/files/doc_financials/2020/q2/FINAL-Q2-20-Shareholder-Letter-V3-with-Tables.pdf)』)  

*3) 
出典:『分析力を武器とする企業(トーマス・H・ダベンポート、ジェーン・G・ハリス著、日経BP、2008年) 

サイカ代表取締役CEO 平尾喜昭氏

データサイエンスにおいて最も重要なのは「経験と勘」 

── データサイエンスは、具体的にどのように進めていくのでしょうか。 

データサイエンスは、❶~❽の8つのプロセスから構成されます。 

❶目的:達成したいことは何か 
❷課題:何から解決するべきか 
❸仮説:何が要因なのか 
❹データ:どんなデータが必要か 
❺分析:どんな分析を行うべきか
❻解釈:どのような判断を行うべきか
❼巻き込み:どのように組織で動いていくか
❽実行

❶~❽を概観すると、「データ」という言葉が登場するのは、プロセス全体におけるちょうど真ん中あたり。いきなりデータを触り始めるわけではないのです。また、統計やデータ分析の専門性が求められるのは❹❺だけです。 

データサイエンスは、実は「データ」「分析」以外の要素が占める割合のほうが高い。ですから、データサイエンスを「理系の人がやること」「統計の専門知識がないとできないもの」と考え、自分には縁遠いものと感じている人が少なくないと思いますが、それは大きな誤解なのです。 

むしろ、データサイエンスにおいて最も重要なのは、「目的」「課題」「仮説」で、データ分析の方針を設定すること。そして「解釈」で、目の前に差し出されたデータに関係性を見出し、ストーリー化することです。 

これを疎かにすると、いくら大量のデータを手に入れて高精度の分析手法を用いても、データから有効な示唆を得ることも、分析結果を成果につなげることもできません。 

逆に、「目的」「課題」「仮説」「解釈」さえできれば、「データ」「分析」については専門人材に任せてもよいのです。 

目的、課題、仮説で解釈

── データサイエンスは、いわゆる“文系”の人でも実践できるのですね。 

むしろ、データサイエンスに漠然と苦手意識を持っている“文系”の人のほうが、データサイエンスに向いているケースが多いかもしれません。 

世の中のさまざまな事象の間にある因果関係を想像し、仮説を立てること。この「仮説力」こそが、データサイエンスの実践に欠かせないスキルだからです。 

昔、とあるコンビニチェーンがデータサイエンティストを大勢雇って「売上に起因する要素」を探るべくデータ分析を行ったところ、導き出された答えは「雨が降ったら売上が下がる」という至極当たり前のことだったという話があります。もちろんこの結果自体が間違っているわけではありませんが、仮説なしに分析しても、データから有効な示唆を得ることはできないということがよくわかる逸話です。 

仮説がなければ、データ化されず、分析もされない事象がある。つまり、仮説力がないと気づけないこと・得られないことがあるということです。今後、分析技術がコモディティ化していく中、「仮説力」がデータ分析における優位性はもちろん、ビジネスそのものにおける優位性をも生むといえます。 

そして、この「仮説力」の基盤となるのは、一人ひとりが持っている「経験や勘」だと考えています。 

たとえば、一般的に、店舗の売上にはネガティブな影響を与えると言われる「雨」。この事象をデータ化して分析する際に、「雨が降ったら売上が下がる」といった仮説を下記のように深掘りしていくと、有効な示唆を得られる可能性が高まります。 

■雨は降れば降るほど売上が下がるという仮説の下、降水量を調べる
■雨の量が一定量を超えると売上が下がるという仮説の下、降水量と売上の関係を調べる
■単純に多いか少ないではなく、降水量によって売上に違いがあるという仮説の下、○mm~○mm/△mm~△mm/□mm~□mmのように降水量をカテゴライズし、それぞれについて売上への影響を調べる
■降水量と気温の組み合わせが売上に影響するという仮説の下、降水量だけでなく気温と売上の関係も調べる

小売りの経験があることは、こうした仮説と分析プランを立てる上で非常に有利に働くと言えます。「雨の日でも、来店するお客さまは一定数いる」という経験や、「雨が降っていて、かつ気温が高い日に売上が下がる気がする」といった勘があるからこそ、筋の良い仮説を立て、適切なデータ化の方法を考えることができるのです。 

データサイエンスは、経営者やマーケターなど一人ひとりの人が持つ「経験や勘」を、目標達成や課題解決に最大限に活かすためのツールと言えます。 

サイカ代表取締役CEO 平尾喜昭氏

データサイエンスによって、“人間力”で勝負できる時代へ 

── データサイエンスに「経験と勘」が活きるというのは、意外な感じがしますね。 

一時、マーケティング業界を中心に「データサイエンスは、人の経験や勘に頼らず、データに基づいて法則性を発見し、再現性を高める手法である」という言い方をされていた時期がありましたが、大きな間違いです。 

この誤った認識が、データサイエンティスト以外の、いわゆる一般ビジネスパーソンの中にデータサイエンスに対する抵抗感を生み、データサイエンスの普及を阻害する一因にもなってきたように思います。 

データサイエンスは、人の経験や勘を最大限に活かすための手段。この正しい認識を広めることで、より多くの人・企業にデータサイエンスを実践してほしいですね。 

サイカ代表取締役CEO 平尾喜昭氏

── より多くの人・企業がデータサイエンスを実践するようになると、社会はどのように変わっていくでしょうか。 

「準備は十分整った、あとは自らの才能で勝負するだけ」と言える社会になるのではないでしょうか。実際、そういう社会をつくりたいと考えたのが、サイカ創業のきっかけでした。 

現状、データサイエンスは“持つ者と持たざる者”がいる状況。つまり、実践できている企業と実践できていない企業で二極化していて、前者が勝ち続ける状況が出来上がってしまっています。 

データサイエンスをより多くの人・企業に行き渡らせることができれば、最後は“人間力”で勝負ができるようになります。ビジネスでいえば、お客さまと向き合い続けることで培われた顧客視点、社会や市場の動向を見極める観察眼、その人独自の感性や感覚、物事にじっくり向き合う胆力や情熱といった、人間ならではの能力をもっと活かせる時代がやってくると思います。 

「もっとリソース(ヒト・モノ・カネ・情報)があったら勝てたかもしれないのに」という悔しい思いをせず、自分の才能で勝負できる、納得感のある世界をつくること。それが私の目標であり、データサイエンスが持っている可能性でもあります。 

サイカ代表取締役CEO 平尾喜昭氏

[インタビュー・文]齋藤千明 
[撮影]小池大介 
[企画・編集]川畑夕子(XICA) 

最適なアトリビューションモデルとは?代表的な分析方法MMMとMTAのそれぞれの仕組みを比較

マーケティング部門では、「予算〇〇億円使って、売上はどれぐらい上がったのか?」という質問をよく受けると思います。

定量的な答えを出すために、様々な角度からデータ分析を行っても、マーケティング費用と売上との関係性を明確にすることは難しい課題です。

そこで、各マーケティング施策の売上への貢献度を定量的に分析できるアトリビューション分析について、誕生の背景と、確立された測定モデルであるマーケティング・ミックス・モデリング(MMM)、そしてデジタル広告で定番のマルチ・タッチ・アトリビューション(MTA)についてご紹介します。貴社にとってどの効果測定方法が最適なのかを見極める際のご参考になれば幸いです。

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変化の激しい時代、事業成果を最大化するための広告投資の最適化方法とは?

アトリビューション分析が誕生した背景

現在、マーケティング領域において「アトリビューション分析」は、デジタル広告の効果を測定する場合に利用されるMTAと同義語になっています。しかし、実はデジタル広告が発展するよりも前から、各広告の売上への貢献度を測ることは、マーケティング担当者や広告主にとっての課題でした。

1960年代、テレビCMが店舗の売上にどれぐらい貢献したのか、誰にもわかりませんでした。この問題を解決するために、統計学の回帰分析を用いて、広告が売上に与える影響を推定する分析モデルがMMMです。インターネットやデジタル広告の時代以前において、定量的にマーケティング効果測定を行う唯一の方法でした。

2000年代に入り、インターネットやデジタル広告の普及に伴い、コンバージョンに至るまでの顧客行動を追跡する技術が開発されました。Cookie(クッキー)やピクセルなどの技術を利用することで、デジタル内の顧客行動をほぼリアルタイムで追跡することができるようになりました。この方法はMTAと言われ、Eコマースのようなデジタルメインの業種で利用されている、定番のマーケティング効果測定手法となりました。

そして現在に至るまで、これらMMMとMTAはマーケティング効果測定手法として長く活用されています。どちらの手法を使うかは、企業が属する業界、扱うことができるデータの種類と量に依存しています。

MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)とは?

MMMは、テレビCM、ラジオ広告、交通広告、新聞広告などのマーケティング活動が、売上に与える影響を測定することを目的として開発されました。

MTAとは異なり、MMMは個人の行動追跡データに基づくリアルタイムの分析は行いません。多くの場合、四半期または月次で分析を行います。分析で利用するデータは、広告出稿量(テレビCMのGRP、デジタル広告の表示数やクリック数など)、コスト(費用)、成果(来店客数、売上やコンバージョン(申込数、ダウンロード数や契約数など)、および外部要因などの様々なデータです。外部要因では、市場環境(競合他社のテレビCMなど)、季節性、天候など、マーケティング活動の効果や業績に影響を及ぼす可能性のある、ありとあらゆるものが分析可能です。

つまりMMMとは、個人のプライバシーを侵害することなく、マーケティング活動や外部要因による売上の増分効果、そして広告の費用対効果を定量化できる効果測定手法です。また、オンライン・オフライン広告両方のアトリビューション分析を行えることから、MMMは「統合アトリビューション分析」とも呼ばれます。

MMMの仕組み

MMMでは、特定のマーケティング施策の効果に影響を与えると思われる要因のデータを時系列変数として使用し、回帰分析を行うことで、そのマーケティング施策が売上に与える影響を測定します。

回帰分析とは、複数の独立変数が売上などの単一の従属変数に与える影響を測定し、独立変数と従属変数の関係性を解析する統計分析の手法です。

MMMの仕組み

MMMでは、マーケティング活動の各要素が売上にどのくらい影響を与えているかを正確に推定することができます。また、例えばテレビCMの放映によって検索数が伸び、リスティング広告に影響を与えるなどといった、マーケティングチャネル横断でどのくらいの波及効果や相乗効果があるかも定量化することができるので、マーケティング効果の全体像を把握することができます。

また、過去のデータの分析にとどまらず、様々な予算配分シナリオから成果を予測することも可能なため、マーケティングプランニングにも役立ちます。

MTA(マルチ・タッチ・アトリビューション)とは?

MTAとは、オンライン上での広告接触など、個人の行動追跡データに基づく効果測定手法です。顧客がコンバージョンに至るまでの経路を分析し、各広告との接触履歴に成果を配分し、評価するものです。このように、MTAはデジタル広告が売上などの事業成果に与える影響を測定するために使用されています。

オンライン・オフライン媒体を統合して広告を展開している場合、オフライン広告における個人の行動データを得ることは難しいため、個人の行動追跡データに基づいた効果測定は難しいでしょう。

広告も成果もオンラインに閉じている場合であれば、個人の行動追跡データを基にアトリビューション分析が可能なので、精度の高い分析ができます。

6つの主なMTA(マルチ・タッチ・アトリビューション)モデル

デジタル広告の領域では、多くの場合複数のチャネル(検索広告、ディスプレイ広告、動画広告やSNS広告など)が同時に使われています。

複数のチャネルでの広告接触後に顧客がコンバージョンに至った場合、各広告を評価するアトリビューション分析モデルにもいくつかの種類があります。

それぞれのアトリビューション分析モデルにもメリット・デメリットがあるため、事業の特徴や目標に応じて、最適なモデルを選定することが重要です。

1. ラストクリックアトリビューションモデル(終点モデル)

ラストクリックアトリビューションモデル(終点モデル)

Eコマースの初期では、マーケターが利用できた唯一のアトリビューション分析モデルが、ユーザーが最後に接触した広告に、コンバージョンのすべての評価を与えるという「ラストクリックモデル」でした。多くの広告プラットフォームでは、今でもラストクリックでのアトリビューション分析をデフォルトで採用しています。

例えば、あるユーザーが商品を探しているときに、貴社の商品のGoogle広告を見たとします。翌日、ユーザーは貴社の商品を思い出し、直接ウェブサイトにアクセスします。そこから1週間後、ユーザーがTwitterに配信した広告を見て、いよいよ購入しようと思い、広告をクリックして購入したとします。

ラストクリックアトリビューションモデルを使用した場合、Twitter広告のコンバージョンに対して100%の評価が与えられます。

しかし、これが最も適切なアトリビューションモデルではないかもしれません。

Twitterでの広告は、ユーザーが購入するための後押しとなったかもしれませんが、今回の場合、ユーザーは最初に接触したGoogleの広告で商品を初めて知ったのです。Twitter広告が効果的だった理由も、ユーザーが最初に訪れたウェブサイトで見た情報が好印象だったからではないしょうか?

このように、ラストクリックアトリビューションモデルでは、考慮されていない要素があることを認識することが重要です。

2. ファーストクリックアトリビューションモデル(起点モデル)

ファーストクリックアトリビューションモデル(起点モデル)

ファーストクリックアトリビューションモデルでは、ユーザーがブランドや商品を初めて知った広告にすべてのコンバージョン評価を割り当てます。

先ほどの例で言えば、このモデルではGoogle広告のコンバージョンに対して100%の評価が与えられます。

ユーザーが最初にGoogle広告を見てから購入に至るまで、スポンサーコンテンツ、SNSなどの他の広告を見たとしても、Google広告にすべての評価が与えれます。

3. 最後の間接クリックアトリビューションモデル

最後の間接クリックアトリビューションモデル

前の2つのモデルと同様に、「最後の間接クリック」アトリビューションモデルも、1つの広告との接点に100%の評価を与えます。

違いは、ユーザーがURLを入力してウェブサイトに直接アクセスした場合などの、直接的な接点は一切評価されないという点です。

このモデルでは、ユーザーが最後に触れたマーケティング施策や広告をきっかけに、商品を思い出したことを重視しています。あるユーザーが、Facebook広告をクリックした翌日に貴社のウェブサイトに直接アクセスして商品を注文した場合、コンバージョン評価の100%がFacebook広告に与えられます。

4. 線形アトリビューションモデル(均等配分モデル)

線形アトリビューションモデル(均等配分モデル)

線形アトリビューションモデルでは、ユーザーがコンバージョンに至るまでに接点があったすべての広告施策に対して、均等に評価を行います。

最初のユーザーの例では、コンバージョン評価の33%をGoogle広告に、33%をウェブサイトの情報とコンテンツ、そして33%をTwitter広告に割り当てられます。

一見シンプルで公平ですが、コンバージョンまでに至った理由を評価するには、それぞれの広告が同じ影響力を持っているという前提条件が必要です。

5. 減衰アトリビューションモデル

減衰アトリビューションモデルでは、接点があったそれぞれの広告の順番を考慮し、コンバージョンに近い方を重要視しています。

ユーザが注文したきっかけとなる広告を順位付けできるモデルですが、未知の仮説に頼ることもあります。

最初のユーザーの例では、Twitter広告に最大のコンバージョン評価を与えます。

しかし、ユーザーの視点から見ると、そのTwitter広告は、すでに知っていて好きだった商品を思い出させるだけの役割だったかもしれません。同じタイミングでTwitter以外の媒体に配信した広告でも、同じ効果があるかもしれません。その場合、Twitter広告に多額の投資をすることは、必ずしも効果的ではない可能性があると考えられます。

6. U型アトリビューションモデル(接点ベースモデル)

減衰アトリビューションモデル

U型アトリビューションモデルは、広告との最初の接触(ユーザーが商品を初めて知ったきっかけ)と、コンバージョンする直前に接触した広告(購入の決定をさせたと思われる最後の後押し)に多くのコンバージョン評価を割り当てる方法です。

コンバージョン評価を最初の広告と最後の広告に40%ずつ、そして残りの20%を間に接触したその他の広告に分配するモデルです。

その他のMTAモデル

この他にも、コンバージョン評価の割合をカスタマイズしたアトリビューションモデルや、事業目標に応じて特定のモデルを各マーケティングチャネルに適用するモデルもあります。

MTAにおける課題

1.完璧に適合するモデルはない

MTAモデルを選ぶには、デジタルマーケティング活動の状況を最も表現す理想的なモデルを選びますが、現実的にどのモデルも完璧なソリューションではありません。デジタル広告戦略(どのようなデジタルチャネルを利用しているか、そして各チャネルがどのような目的があるかなど)に合わせて、柔軟に変更することが必要です。

2.モデルに組み込めるオフライン広告のデータが限られている

MTAは、複数のマーケティングチャネルやデバイスを考慮することを目的としています。マーケティングチャネルにはテレビ、ラジオや印刷物などが含まれるはずですが、オンライン媒体と比べてオフライン媒体に関するデータが不足しているため、MTAにどう組み込むのかが課題です。

3.個人情報保護規制強化の影響で分析精度低下の可能性がある

Google Chrome、Safari、Firefoxなどのウェブブラウザから3rdパーティーCookieの制限、AppleのIDFAモバイル広告識別子の廃止により、オンライン上でも獲得できるデータの量と粒度そしてそのデータの活用目的が制限されます。
その結果、個人の行動履歴データに基づいているMTAによるアトリビューション分析の精度を担保することが、技術的に難しくなっていく可能性があります。

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Cookieレス時代の広告効果分析事例

最適なアトリビューションモデルとは?

MTAと比較した場合、MMMの主な利点は、分析に組み込むことが可能なデータの範囲の広さです。デジタル広告のみでなく、オフライン広告も含めたマーケティング施策、価格の変動、季節性や気候といった外部要因など、企業の事業成果に影響を与えるすべての要因の全体像が把握できるモデルです。

そのため、MMMは以下のような企業に適しています。

・複数のマーケティングチャネルや媒体を活用している企業
・オフラインのマーケティング活動を行っている企業
・オンラインストアと実店舗の両方を持っている企業
・マーケティング活動全体の計画や予算を最適化したい企業

一方、MTAはMMMより簡単に分析ができるので、Google Adsなどの主要なデジタル広告プラットフォームにすでに組み込まれている機能です。

MTAは、以下のような企業に適しています。

・活用しているマーケティングチャネルが少ない企業
・活用しているマーケティングチャネルのほとんどがオンラインであり、
・売上も主にオンラインで得られている企業

まとめ

現代のマーケティングにおいて、効果的な施策を正確に評価するためのデータ分析は必要不可欠です。そして、企業のマーケティング活動や戦略に応じて、MMMとMTAの両方をアトリビューション分析の手法として有効活用することが重要です。

マーケティング活動が売上に与える影響を正確に測定するために、適切なアトリビューション分析モデルや分析ツールを選択することは、時間がかかるかもしれません。しかし、投資対効果を明らかにし、マーケティング投資を最適化することにより、事業成果に大きなインパクトを与えることが可能です。

経営の意思決定を支援する、データアナリストの仕事とは

サイカのデータアナリストの仕事は、単なるデータ分析にとどまりません。データ分析は課題解決の手段と考え、経営判断の材料となる「使えるデータ」にこだわります。そんなサイカのデータアナリストは、どんな仕事をしているのか。何を大事にしているのか。サイカのデータ分析を担う、ADVA Analysis部部長・西津平に聞きました。

ビジネスに活きるデータを提案する、「広告×統計」のプロフェッショナル

──まず、サイカのデータアナリストの役割を教えてください。

広告に関わるデータを高いレベルで分析する「広告×統計」のプロフェッショナルが、サイカのデータアナリストです。分析結果は出して終わりではなく、経営の意思決定やアクションの実施につなげることが重要です。そのために、この結果が出た理由や、期待していた結果との差異、推定原因、今後どのようなデータを分析するとよいかなど、結果に解釈を加える役割を担います。

──ADVA Analysis部の組織体制について教えてください。

ADVA Analysis部は、MAGELLAN(マゼラン)課、IES課、研究課の3つの組織に分かれています。

MAGELLAN(マゼラン)課は、ヒアリングしたお客様の課題を解決するため、データサイエンスを駆使してお客様に並走するチーム。IES課は、広告のバイイングやクリエイティブの制作を行うIES事業部と連携し、広告の中でも特にテレビCMに課題感を持っているお客様を対象にテレビCMの深堀り分析を行うチーム。研究課は、マゼラン課とIES課が蓄積したナレッジを体系化し、再現性あるノウハウにしていく役割と、いまのソリューションでは解決できない新しい課題が現れたときに、新しい分析方法を研究して生み出していく役割を担います。

──データアナリストは、業務をどのように進めていくのですか。

業務は、私たちデータアナリストと、対面業務を行うコンサルタントが2人1組でペアを組んで進めます。

まずは、お客様の解決したい課題をヒアリングし、何が知りたいのか、分析結果をどんなアクションに使いたいのか、ご要望を詳しくうかがっていきます。次に、ヒアリングした情報をもとにデータ分析の目的を合意します。そのあとはお客様に必要なデータを集めていただき、こちらで分析を行います。最後に、お客様の解決したい課題に合わせた形でレポートを提出し、コンサルタントと一緒にアクションプランをご提案します。

ここまでが基本のPDCAで、この一連の流れをスピード感をもって繰り返していきます。

主体的な提案で、人を動かす

──お客様とコミュニケーションを取る機会が多そうですね。

そうですね。データ分析をする人って、1人で閉じこもって数字を黙々といじっているのが好きな方もいると思うんですけど、サイカのデータアナリストはお客様と対話しながらデータの有効な活用方法をご提案する、コンサルティングに近い役割まで担います

なので、コミュニケーションが得意な「喋れる理系」が向いていますね(笑)

──最終的なゴールは、お客様に課題解決のためのアクションを実行していただくことだと思いますが、そのためには何が必要なのでしょうか。

人を動かすのは難しいですよね。意外かもしれませんが、絶対に必要なのは主体性だと考えています。人がアクションするきっかけは、前のめりに考えた意欲的な提案だったり、お客様の状況を深く理解したうえで出てくる深い示唆だったりするんです。その部分が浅いと、お客様を動かす分析結果はなかなか出てこないんですよね。

──統計の知識はどのくらい必要ですか。

一定の知識はもちろん必要ですが、仕事をするなかで自然と身につくものでもあります。なので、統計の知識よりも主体的にお客さんのこと考えられる力のほうが重要度が高いです。

スキルについてあえていうならば、データ分析は、目的の設定が何より重要です。なので、どんな業界のどんな分析でもいいので、「こういう目的のために、こういった仮説を立て、こんな分析をした結果、分析の前後でこうアクションが変わった」という経験が一つでもあれば十分だと思いますね。

──入社したらどのように業務に入っていきますか。

新入社員には、必ずメンターとなる先輩社員がつきます。その上で、丸1ヶ月研修を行います。2〜3ヶ月目は、細かい業務を覚えてもらうために、OJTでいろいろな案件に関わってもらいます。4ヶ月以降は先輩社員と一緒に自分の案件を持ち、実際の進行を学んでもらう形です。半年くらいのスパンでしっかり育成していくオンボーディング制度が整っているので、スキルや経験が浅くても大丈夫です。

▲サイカの全メンバーのうち、約3割がデータアナリスト

豊富な学びと実践の場で、スキルを積み重ねていく

──データサイエンスのプロフェッショナルである皆さんは、お客様の経営課題をどのように把握しているのですか。

ペアになるコンサルタントと協力しています。

データアナリストは分析結果をまとめ、結果からお客さんの課題を解決できるような示唆や解釈を考える役割。コンサルタントはデータアナリストが考えた示唆や解釈をどう提案すればお客様に使ってもらえるかを考える役割を担います。

お客様との対面業務をメインとするコンサルタントは、お客様の真の課題を日々深くヒアリングしています。ここでしっかりとコミュニケーションを取りながら、経営判断に使える分析を考えていきます。

──自分が担当する案件以外の分析ノウハウや広告トレンド、各業界のビジネスモデルなど、業務に必要な情報はどのようにキャッチアップしていますか。

全メンバーが参加する部内のミーティングで、全案件のレポートを共有すでに社内にノウハウがあるものが多いです。

あとは、1ヶ月に1回のスパンでコンサルタントを含めた勉強会を実施しています。ここでは具体的な分析事例を学んでいきます。ほかにも、自主的に事例を学ぶ会が積極的に開催されているので、学びの場はたくさんあります。

走りながら考える、スピードとロジックの共存

──ADVA Analysis部は、研究課を中心に分析ノウハウをお客様に還元していく役割も担っています。分析ノウハウがあることで、お客様はどんなメリットを受けられるのでしょうか。

企業の広告担当やマーケティング担当の方がいちばん気にされているのは、実は「この業界の傾向は?」「直近の広告トレンドって何?」というところなんです。もしかすると、自社の広告効果以上に知りたい部分なのかもしれません。

私たちはこれまで100社以上のナショナルクライアントのデータ分析を行ってきました。良い意味で偏りがなく、網羅的な分析実績がたまっています。業界の傾向やトレンドを知りたいというご要望に応えたいと思った時に、我々が蓄積してきた分析を体系的にまとめたデータは、非常に有用なナレッジです。

業界の傾向や広告のトレンドが分かると、自社の分析傾向の把握や、示唆の深掘りにつながっていきます。広告には流行もあるので、「いまやるべき」というタイミングの判断や施策のスピードアップにもつながりますね。

──ADVA Analysis部が大事にしていることを教えてください。

ADVA Analysis部は、サイカのルーツであるデータサイエンスの技術をより磨きながら、いままでなかった新しいことにもチャレンジしていく組織です。

そのためには、走りながら考えられることが大事です。考えがまとまらないと動けないのはだめだし、考えがないまま動いてしまうのもだめです。自分なりのロジックを持ち、こういうふうにやってみたらどうだろうと考え、スピード感を持って、進めながら軌道修正していく。そんなスピードとロジックが共存したデータサイエンスをこれからもアップデートしていきたいです。

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※インタビュイーの所属・役職は取材当時のものです。