マーケティングデータ分析とは?目的別の手法・進め方・ツールを解説

マーケティングとは、「販売を不要にすること」。これは、現代経営学の父と呼ばれるピーター・ドラッカーの言葉です([英和対訳]決定版 ドラッカー名言集/ダイヤモンド社より)。
このマーケティングには、データ分析が欠かせません。勘や経験に頼ったマーケティング活動の大半は失敗に終わり、コストを浪費してしまいます。
とはいえ、マーケティングにデータ分析が欠かせないと言われても「どんなデータ分析手法があるかすらよく知らない」という方も多いと思います。
本記事では、マーケティングデータ分析の基本的な考え方から、目的別の手法13選、実務での進め方、ツールの選び方まで体系的に解説します。データ分析をこれから始める方から、自社の分析体制を見直したいマーケティング担当者まで、ぜひ実務の参考にしてください。
目次
マーケティングデータ分析とは?
マーケティングデータ分析の定義
マーケティングデータ分析とは、顧客・市場・競合・施策などに関するデータを収集・整理・分析し、マーケティング活動の意思決定に活かすプロセスです。「誰に・何を・どのチャネルで・どのくらい届けるか」という問いに対し、勘や経験ではなくデータを根拠として答えることで、マーケティング投資の精度と再現性を高めます。
なぜ今、マーケティングにデータ分析が欠かせないのか
マーケティングにおけるデータ分析の重要性は、以前から認識されてきました。しかし近年、その必要性が急速に高まった背景には、3つの環境変化があります。
① デジタルチャネルの多様化とデータ量の爆発的増加
テレビCM・Web広告・SNS・ECサイト・メールマガジンなど、マーケティング施策のチャネルは年々増え続けています。チャネルが増えるほど、各施策の成果データも複雑・膨大になります。人間が直感で「どの施策が売上に貢献しているか」を把握できる限界をとうに超えており、データを体系的に扱う仕組みなしに全体最適を目指すことは難しくなっています。
② 消費者行動の複雑化
消費者が購買に至るまでのプロセスは、以前のような「テレビCMを見て店頭で買う」という単純な流れから大きく変わりました。SNSで認知し、レビューサイトで比較検討し、価格比較サービスを経てECで購入するといった複雑な経路が当たり前になっています。こうしたカスタマージャーニーを正しく理解するには、複数のデータソースを横断した分析が不可欠です。
③ 意思決定スピードの要求
市場環境の変化が速くなった現代では、マーケティング施策の立案・実行・評価のサイクルを素早く回すことが競争優位につながります。データ分析によって「何が効いていて、何が効いていないか」を迅速に判断できる体制を持つ企業と、そうでない企業では、同じ予算でも積み上がる成果に大きな差が生まれます。
「データ分析全般」とマーケティングデータ分析の違い
「データ分析」という言葉は幅広く使われており、業務効率化・財務分析・品質管理・需要予測など、あらゆるビジネス領域に適用されます。マーケティングデータ分析はその中の一領域ですが、目的と対象データが明確に絞り込まれている点が特徴です。
| データ分析全般 | マーケティングデータ分析 | |
|---|---|---|
| 目的 | ビジネス全般の課題解決・意思決定支援 | 顧客理解・施策効果の評価・売上・認知・購買意向の最大化 |
| 対象データ | 財務・業務・生産・品質など幅広い | 顧客行動・購買履歴・広告出稿・市場調査・競合情報など |
| 主な利用者 | 経営・財務・製造・マーケティングなど全部門 | マーケティング部門・経営企画・データサイエンティスト |
| 代表的な手法 | 統計分析・機械学習・BI全般 | STP・RFM・MMM/アトリビューション分析など |
つまり、「データ分析のスキルを持つこと」と「マーケティングデータ分析を実務に使いこなすこと」は別の話です。後者には、統計的な知識に加えて、マーケティング固有の目的・指標・データ構造への理解が必要になります。
本記事では、こうしたマーケティングデータ分析の全体像を体系的に解説します。まず目的別の13の分析手法を紹介し、次に分析を実務に活かすための進め方、ツールの選び方、そして分析結果を施策に落とし込むプロセスまでを扱います。自社の課題に合った手法を選ぶための地図として活用してください。
【目的別】マーケティングを支えるデータ分析手法13選
それでは早速、マーケティングにおいて成果向上に直結する、代表的な13のデータ分析手法を紹介します。
データ分析を利用する主なシーンは、下記の通りです。
- マーケティング戦略を立てる(市場・競合分析)
- 顧客データを分析する(CRM・LTV分析)
- データの傾向を明らかにする(集計・トレンド把握))
- データの関係性を明らかにする(相関・因果推論)
- データの分類を明らかにする(セグメンテーション)
- データの隠れた要素を見つけ出す(インサイト発見)
各シーンごとに重要なデータ分析を紹介していくので、自社マーケティングに必要だと考えられるデータ分析を選定するための参考にしみてください。
なお、データ分析には今回紹介する手法以外にも多くの切り口がありますが、大きくは「何が起きたか(記述的)」から「どうすべきか(処方的)」までの4段階に大別されます。 自社のデータ活用フェーズをより俯瞰的に整理したい方は、こちらの解説記事も併せてご活用ください。
・関連記事: データ分析の4分類とは? マーケターの問いに応える「記述的」「診断的」「予測的」「処方的」分析の役割と活用方法
マーケティング戦略を立てる
1. 4P分析
4P分析は、「Product(商品)」「Price(価格)」「Place(販売)」「Promotion(流通)」の4つの軸で情報を整理し、マーケティング戦略を立てるためのデータ分析手法です。

たとえば、新しい商品やサービスをリリースするにあたって、機能や性能、適正価格、販売チャネル、販促活動などを、ターゲットユーザーに合わせて設計します。
大切なのは「4つのPのバランス」です。いずれか1つに偏ったマーケティング戦略は、失敗する可能性が高いと言えます。
2. STP分析
STP分析は、「Segmentation(市場の細分化)」「Targeting(ターゲット市場を決定)」「Positioning(市場でのポジションを確認)」という3つの軸で情報を整理し、市場におけるポジションを明確にするためのデータ分析手法です。

ビジネスとは市場シェアの獲得競争でもあるため、マーケティング戦略を立てるにあたって、自社やその商品・サービスのポジションを把握する必要があります。
3. SWOT分析
SWOT分析は、「Strengths(自社の強み)」「Weaknesses(自社の弱み)」「Opportunities(市場の機会)」「Threats(市場の脅威)」という4つの軸で情報を整理し、実態に即したマーケティング戦略を立てるためのデータ分析手法です。

SWOTを軸に情報を整理すれば、自社と市場のプラス要素・マイナス要素を考慮しながら、適切なマーケティング戦略を立てられるようになります。
顧客データを分析する
4. デシル分析
デシル分析とは、商品やサービスの購入データをもとに、顧客を10のグループに分割し、購入比率や売上高構成比などを視覚化するデータ分析手法です。

顧客全体だけでなく、顧客をさまざまなセグメントにわけて分析を行うと、違う角度からの顧客データ分析が可能になります。
優先的にマーケティングコストを投資すべき顧客層が判明するので、投資先の「選択と集中」を実現します。
5. RFM分析
RFM分析とは、「Recency(最終購入日からの経過日数)」「Frequency(購入回数と購入頻度)」「Monetary(購入金額の総額)」という3つのデータから顧客をスコアリング・ランキング化して、顧客グループを分類するデータ分析手法です。
RFMを軸にデータを整理した上で、顧客を次のように分類します。


※以下を元に弊社で作成
出典:https://tech.pepabo.com/2017/12/06/tableau-rfm/
これにより、アップセル・クロスセルを積極的に実施すべき顧客と、離脱防止に務めるべき顧客などが判明します。
データの傾向を明らかにする
6. クロス集計分析
クロス集計分析とは、基本的なデータ分析手法の1つです。アンケート調査を通じて得られたデータを用いて、回答者の属性や質問項目など複数の軸をかけ合わせ、データを集計します。
例)女性向けキャンペーンを実施することになったアイスメーカーが、キャンペーンの対象商品を決めるためにクロス集計分析を実施
① 対象商品の候補に挙がっているバニラアイスとストロベリーアイスの売上データを比較すると、バニラアイスがストロベリーアイスの2倍の売上を占めています。このデータだけを見たら、バニラアイスをキャンペーンの対象商品にしようと思うかもしれません。

ですが、今回はターゲットを女性にしぼったキャンペーンです。そこで、性別ごとの売上データを見てみると、女性よりも男性のほうが購買数が多いことが分かります。

そこで、購入者の性別ごとに売上データを見てみます。すると、バニラアイスの購入者の9割は男性で、一方のストロベリーアイスは、購入者の8割が女性でした。この結果を受け、 今回の女性向けキャンペーンの対象商品はストロベリーアイスに決定しました。

このように、データ分析として必要な情報を抽出するために、さまざまな軸を組み合わせながら分析するのが、クロス集計分析です。
出典:【ゼロから始めるデータ分析#2】データ分析初心者が覚えておくべき3つの分析手法 | 株式会社サイカ https://staging-corporateweb.temp513.kinsta.cloud/xicaron/data-analysis-for-beginners-2/
データの関係性を明らかにする
7. 重回帰分析
統計学において「重」とは複数、「回帰」とは因果関係を意味します。
重回帰分析とは、「一つの成果(目的変数)」と「複数の要因(説明変数)」における関係性を把握するデータ分析手法です。
「売上目標を達成するためには、広告宣伝費にいくらかけるべきか」
「施策Aと施策B、それぞれどのくらいの効果が見込めるか」
「今期の予算をどう配分すると、マーケティング成果を最大化できるか」
など、売上予測やマーケティング戦略の策定などに活用できる、マーケティング分野では必須ともいえる分析手法です。
たとえば、売上高(目的変数)に影響を与えているさまざまな要因(説明変数)の影響度を解析することで、マーケティング施策の最適な予算配分を検討できます。

出典:【ゼロから始めるデータ分析#2】データ分析初心者が覚えておくべき3つの分析手法 | 株式会社サイカ https://staging-corporateweb.temp513.kinsta.cloud/xicaron/data-analysis-for-beginners-2/
8. ロジスティック回帰分析
ロジスティック回帰分析とは、複数の説明変数(要因)から、「2値の目的変数(結果)」が起こる確率を予測・説明するための分析手法です。2値とは、「YESかNO」のように、2つの目的変数しか存在しない値を意味します。
たとえば、見込み客のデータ(売上高、従業員数、利益率など)から、その見込み客が自社商品を購入する確率などを予測できます。

<重回帰分析とロジスティック回帰分析の違い>
- 重回帰分析
複数の説明変数から、目的変数の数値を予測する - ロジスティック回帰分析
複数の説明変数から、目的変数が「1」になる確率を予測する
重回帰分析とロジスティック回帰分析は類似点もありますが、利用シーンが明確に分かれています。
9. アソシエーション分析(バスケット分析)
アソシエーション分析(バスケット分析)とは、購買データをもとに、ある商品が、他の商品と一緒にどのくらい購入されているかを分析するデータ分析手法です。
よく一緒に買われている商品の組み合わせがわかるので、同時に購入されやすい商品を近くに配置したり、勧めたりするなどのマーケティング戦略に活かせます。

※以下を元に弊社で作成
出典:誰でも手軽に活用できるバスケット分析のメリットと実施方法とは? | リサーチ・市場調査ならクロス・マーケティング https://www.cross-m.co.jp/column/data_marketing/dtm20220722/
データの分類を明らかにする
10. クラスター分析
クラスター分析とは、データの母集団からデータごとの特徴量(予測の手がかりになる変数)を発見し、特徴量に応じたデータの集団(クラスター)を明らかにするデータ分析手法です。
クラスター分析の対象は顧客情報だけでなく、企業、商品・サービス、地域、あるいはアンケート項目などあらゆるデータを対象とします。
膨大なデータも単純化でき、マーケティングにおいては消費者のセグメンテーションし、クラスターごとに適した施策を打つことができます。

11. 決定木分析
決定木分析とは、ツリー構造でデータを分類していくデータ分析手法です。簡単な分析でもそれなりに精度の高い結果が得られ、分析結果を解釈しやすいことから、データ分析の現場で良く用いられています。

主に潜在顧客の発見や、商品・サービスが顧客満足度に与える影響などを把握するためのデータ分析手法です。
データの隠れた要素を見つけ出す
12. 因子分析
因子分析とは、観測された要素データから、隠れた共通の因子(構成要素)を見つけ出す分析手法です。
アンケート回答結果の裏に隠れたユーザの意図を数値化するなど、顧客の本質的なニーズを把握したいときに使います。

13. コレスポンデンス分析
コレスポンデンス分析とは、アンケート調査やクロス集計分析などで得られた結果を、散布図にするデータ分析手法です。

※以下を元に弊社で作成
出典:コレスポンデンス分析とは|市場調査ならインテージ https://www.intage.co.jp/glossary/400/
メーカーの商品説明資料や、マーケティングの企画書などでもよく見かけますね。
属性同士の位置関係から、属性同士の関連性を把握できるので、「この属性を持っているとこの属性も持ちやすい」など、競合商品の関係性を把握する時などに使えます。
マーケティングにおけるデータ分析の必要性とメリット
前述の環境変化を踏まえた上で、実際に自社がマーケティングデータ分析に取り組むことで、どのような具体的なメリットが得られるのかを整理します。
データにもとづいた意思決定
従来の勘や経験に頼ったマーケティングは、ギャンブル的要素の強い活動です。マーケティング活動によって大きなコストがかかるので、まさに「当たれば天国、外せば地獄」だと言えます。
そうしたギャンブル的要素を排除するためにも、データ分析が欠かせません。データにもとづいた意思決定により、マーケティング活動の成功率を大幅にアップできます。
パーソナライズされたマーケティングの実現
消費者のニーズが多様化したことにより、「パーソナライズされたマーケティング」の必要性が高まりました。
「パーソナライズされたマーケティング」とは、顧客データ、見込み客データ、市場データなどを分析した上で、セグメント(ターゲットの分類)ごとに異なるマーケティングを実行することです。
「パーソナライズされたマーケティング」を実現するためには、前述した分析手法を駆使して、市場や顧客の理解を深めていくことが欠かせません。
仮説・検証の繰り返しによるマーケティングの改善
データを活用したマーケティングのメリットとして、「施策の実行」と「成果の確認」を素早く行えることがあります。仮説・検証のサイクルを細かく繰り返すことで、マーケティング活動の改善がスピーディーに行えるようになります。
マーケティングの目的に応じてさまざまなデータ分析手法を使い分け、仮説・検証のサイクルを高速化できれば、より高いマーケティング成果が見込めます。
マーケティングのデータ分析を実施する手順
マーケティングのデータ分析は、主に次のようなステップで実行します。

上記のステップを頭からスタートし、しっかりとフローに沿ってデータ分析を進めていきます。「おかしい」と感じる部分の1つ前に戻り、再度フローを進めます。このフローに従わないと、マーケティングのデータ分析が失敗に終わる可能性が高くなるので、注意してください。
各ステップの細かい内容は、『【ゼロから始めるデータ分析#1】データ分析初心者がまず知るべき「分析の8ステップ」』で詳しく解説しています。
マーケティングに限らず、ビジネス全般のデータ分析に大切な基礎知識がつまっているので、本記事と合わせてご覧ください。
マーケティングにおすすめのデータ分析ツール
マーケティングのデータ分析は、データ数が少なければ、Excelなどのツールを使った分析も可能です。ただし、豊富かつ膨大なデータを分析しなければならない場合は、専用のデータ分析ツールをおすすめします。
ここでは、マーケティングにおすすめのデータ分析ツールを4つ紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)ツール
MMMとは、マーケティング関連のビッグデータを統合的に分析し、マーケティングの各施策が成果に与えた直接的な影響と間接的な影響を可視化する統計的手法のことをいいます。
マーケティングのためのメディアやチャネルが増加し続ける中、統合的なデータ分析を行わなければ、正しいマーケティング成果を把握することはできません。この問題を解消し、あらゆるデータからマーケティング活動の全体像を把握できるのが、MMMで、この仕組みを誰もが使えるようツールに落とし込んだのがMMMツールです。
サイカが提供するMMM分析基盤「MAGELLAN(マゼラン)」は、広告効果の可視化・最適な予算配分のために、幅広い業界・業種の企業に導入されています。
MA(マーケティング・オートメーション)
MAとは、事前定義したシナリオと取り込んだ見込み客データにより、リードジェネレーション(見込み客の創出)とリードナーチャリング(見込み客の引き上げ)を可能にするシステムです。
オンラインとオフラインの見込み客データを分析しながら、事前に定義したシナリオをトリガー(きっかけ)にして、マーケティング施策の一部を自動化できます。
ビッグデータを活用したマーケティング業務の効率化を実現し、マーケターをクリエイティブな仕事に集中させることができます。
DMP(デジタル・マネジメント・プラットフォーム)
DMPはインターネット上に蓄積された、膨大なデータを管理・分析するためのデータ分析ツールです。
主に、DMP事業者が独自に収集したオーディエンスデータ(3rdパーティデータ)を活用し広告運用を最適化するほか、自社が保有するユーザーデータと組み合わせて、確度の高い見込み客を特定するなどの活用方法も可能です。
また、DMPを活用して、セグメントしたユーザーごとに広告配信やメール配信までできるため、One to Oneマーケティングが可能になります。
CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)
CRMはユーザーデータを総合的に管理し、さまざまな切り口で顧客分析を行うためのデータ分析ツールです。また、データ分析だけでなく、部門横断的なユーザーデータ活用も実現します。
もともとはユーザーデータを管理し、良好な顧客関係を築くためのツールでした。しかし近年では、多くのCRMでデータ分析機能が強化されており、顧客分析に欠かせないデータ分析ツールとなっています。
データ分析結果をマーケティング施策に活用する方法
データ分析を行うだけでは、マーケティングの成果向上にはつながりません。重要なのは、分析によって得られた示唆を、具体的なマーケティング施策に落とし込み、実際のアクションへとつなげることです。ここでは、データ分析結果をどのように施策へ活用するか、そのプロセスとポイントを解説します。
1. 分析結果から課題・仮説を抽出する
まず、可視化・分析したデータから、現状の課題や新たな発見、仮説を導き出します。たとえば、「特定の顧客層の離脱率が高い」「特定の商品が特定チャネルでよく売れている」など、データから読み取れる事実や傾向を整理します。
2. 施策の立案と優先順位付け
抽出した課題や仮説に対して、どのようなマーケティング施策が有効かを検討します。複数の施策案が出た場合は、インパクトや実現可能性、リソースなどを考慮し、優先順位をつけて実行計画を立てましょう。
3. 施策の実行と効果測定
立案した施策を実行し、その成果を定量的に測定します。事前にKPI(重要業績評価指標)や評価基準を設定しておくことで、施策の効果を客観的に判断できます。
4. PDCAサイクルによる継続的な改善
効果測定の結果をもとに、施策の改善点を洗い出し、次のアクションへとつなげます。このPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを繰り返すことで、マーケティング活動の精度と成果を高めていくことが可能です。
5. 専門人材や体制の整備
分析から施策立案・実行までを効果的に進めるためには、データサイエンティストやマーケティングアナリストなど、専門的な知識を持つ人材の活用が有効です。自社に専門人材が不足している場合は、外部の専門家に相談したり、社内での育成やチーム体制の強化を検討しましょう。
このように、データ分析の結果をマーケティング施策に活用するには、単なる分析にとどまらず、課題抽出から施策立案・実行、効果測定、そして継続的な改善まで、一連のプロセスを意識して進めることが重要です。データにもとづく判断とアクションを繰り返すことで、マーケティングの成果を着実に向上させることができます。
マーケティングデータ分析を深化させる:データサイエンスの視点
ここまで紹介した手法・進め方・施策活用のプロセスを実践していくと、やがて「データはあるのに、何を示唆しているのかわからない」という壁にぶつかることがあります。その壁を越えるための視点が、データサイエンスです。
近年、マーケティング業界でニーズが高まっている分野が、「データサイエンス」です。データサイエンスとは、企業が保有している膨大なデータを解析し、ビジネスの利益になるような知見を導き出すためのアプローチのことをいいます。
ビジネスにおけるデータ分析が一般化するにつれて、「データを分析すればあらゆることを説明できる」という認識が浸透しました。これは半分正解、半分不正解です。なぜなら、データそのものは無機質な情報の集まりであり、データを眺めているだけでは何も説明できないからです。つまり、「データは答えをくれない」のです。
データから答えを得るためには、ビジネスパーソン自身がデータに命を吹き込む必要があります。様々なアプローチを駆使してデータから示唆を導き出し、次のアクションに繋げていく、この「命を吹き込む」部分が、データサイエンスで行うことです。マーケティングにおいてデータ活用のニーズが高まる中、データサイエンスもまた欠かせないものになりました。
データサイエンスについては、『データサイエンスとは?データのプロがわかりやすく解説【初学者におすすめの書籍3選】』で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
よくある質問:マーケティングデータ分析
Q1. マーケティングデータ分析を始めるのに、どんなデータが最低限必要ですか?
最低限必要なデータは、分析の目的によって異なります。顧客理解が目的であれば購買履歴・顧客属性データ、施策効果の評価が目的であれば広告出稿量・費用・売上の時系列データが出発点になります。まずは自社がすでに保有しているデータを棚卸しし、「何の問いに答えたいか」を先に定義してから、必要なデータを特定する順序が重要です。完璧なデータが揃うまで分析を始めないよりも、手元のデータで始めて不足を補っていく方が実務では現実的です。
Q2. 専門知識がなくても、マーケティングデータ分析はできますか?
4P分析・STP分析・SWOT分析・クロス集計分析・デシル分析などはExcelや表計算ツールで実施できるものも多く、統計の専門知識がなくても取り組めます。一方、重回帰分析・因子分析・クラスター分析などはある程度の統計的理解が必要です。まずは専門知識不要な手法から始めて実績を作り、徐々に高度な手法に移行していくアプローチが、組織としての分析能力を育てる上で現実的です。高度な分析が必要な局面では、外部の専門家やツールの活用も選択肢になります。
Q3. 13の手法のうち、どれから始めればいいですか?
自社の状況によって優先すべき手法は異なります。目安として、顧客データ(購買履歴)がある場合はRFM分析またはデシル分析、広告・マーケティング施策の費用対効果を知りたい場合は重回帰分析またはMMM、市場での自社ポジションを整理したい場合はSWOT分析やSTP分析が取り組みやすい出発点です。「すべてを一度に使いこなす」ことを目指す必要はなく、直近の経営課題やマーケティング課題に最も直結する手法を一つ選んで試すことが、最も速く成果につながります。
Q4. データ分析の結果が出ても、社内で活用されないのはなぜですか?
最もよくある原因は、分析が「課題先行」ではなく「データ先行」で始まっていることです。「このデータで何か分かることはないか」という発想で始まった分析は、出てきた結果が具体的な意思決定に接続しにくくなります。分析を社内で活用するためには、「誰の・どんな判断を・いつまでに支援するか」を分析の設計段階で明確にしておくことが重要です。また、分析結果の共有方法も重要で、数字を並べるだけでなく「だからこの施策を変えるべき」というアクションへの橋渡しをセットで提示することが、社内での活用率を高めます。
Q5. マーケティングデータ分析の効果が出るまでにどのくらいかかりますか?
分析の種類と目的によって大きく異なります。クロス集計分析やRFM分析のように既存データを用いる手法であれば、分析自体は数日〜数週間で完了し、施策への反映も比較的速く行えます。一方、重回帰分析やMMMのように時系列データを必要とする手法は、データ収集・整備から始めると数ヶ月かかることもあります。また、分析結果を施策に反映してから成果が数字に表れるまでには、さらに一定の時間が必要です。「分析を始めてすぐに売上が上がる」という期待値設定は現実的ではなく、PDCAサイクルを継続的に回す中で精度と成果が積み上がるものだと理解しておくことが重要です。
おわりに:データ分析を、次の一手へ
マーケティングデータ分析は、手法を知ることがゴールではありません。4P・RFM・重回帰分析といった手法は、あくまで「問いに答えるための道具」です。重要なのは、自社の課題に対してどの問いを立て、どの手法を選び、分析結果を実際の施策に落とし込めるかです。
本記事で紹介した13の手法すべてを一度に使いこなす必要はありません。まず自社のマーケティング課題を一つ特定し、その課題に対応する手法を一つ選んで試すことが、データドリブンなマーケティングへの現実的な第一歩です。
どの手法から始めるべきか迷う場合は、顧客データがあればRFM分析、売上への施策貢献を知りたければ重回帰分析またはMMM、市場・競合の全体像を整理したい場合はSWOT分析やSTP分析が取り組みやすい出発点になります。
分析の具体的な進め方については、以下の関連記事も参考にしてください。




